企業買収契約の売手表明保証違反による買手の求償権(サンドバッギング)

はじめに

この事業を買うと毎月最低10万円儲かるよ、と言われて、その言葉を信頼してその事業を1000万円で買ったら、実際には毎月1万円しか儲からなかった、という場合、詐欺で売手から損害賠償を得ることが可能かもしれませんが、毎月最低10万も儲かるはずがない、せいぜい毎月1万円くらいしか儲からないことを知っていて、それでもこの事業がどうしても欲しいのでその値段で買った、という場合、買った後、毎月最低10万儲かるという売手の表明は間違っていたとして、売手から損害賠償を得られるでしょうか?

米国の不法行為法の詐欺(Misrepresentation)は、表明(Representation)への「信頼」(Reliance)を要件としているため、「信頼」が無い場合、すなわち、表明を信じていない場合、不法行為法の詐欺は成立しないため、損害賠償を得られません[1]

では同じ例で、毎月最低10万円儲かるという売手の表明が契約書に記されていた場合はどうでしょうか?買手は、詐欺ではなく、契約違反により売手から損害賠償を得られるのでしょうか?

買手の立場からは、毎月最低10万円は儲かるという表明は契約の条件であり、10万円儲からなければ契約違反である、と考えるでしょう。

売手の立場からは、同じ表明が文書に書かれただけであり、「信頼」が無ければ、売手から損害賠償を得ることはできない、と考えるでしょう。売手は、買手を騙すつもりがなければ、買手が売手の表明を「信頼」していないのなら買わなければいいし、買ってから損害賠償を請求するのは、イチャモンをつけていると見るでしょう。

 

こういった理由で、売手の表明を「信頼」せずに買って、後から損害賠償を請求することを、サンドバッグまたはサンドバッギング(元々、強盗が小さな袋に砂を入れて不意打ちに使う物であり、ポーカーでは、持ち札がいいのにわざと悪いかのように振る舞い、相手に沢山掛けさせて勝ち取る戦略を意味します)と呼ばれるようになったと考えられます。

買手の立場が正しいのか、それとも売手の立場が正しいのか、この問題は、米国では、州の判例法により解釈されてきました。

州判例法のトレンドは、1990年のニューヨーク州の歴史的な判決であるCBS対Ziff-Davis事件判決をきっかけに、過去30年に渡って、不法行為法の詐欺と表明保証違反を類似のものとみなし売手の表明への「信頼」を要件とする古典的な考え方から、表明保証を純粋な契約法の概念と見て表明への「信頼」を要件としないとする現代的な考え方へと徐々に変化してきました[2]

以下にいくつかの州の判例法を見ていきます。

州判例法

ニューヨーク州

ニューヨーク州のCBS対Ziff-Davis事件では、原告CBSは、売手Ziff-Davisから入手した財務情報を元に買収価格を算定し、両者が合意し買収契約を締結しました[3]。デューデリジェンスの結果、買手CBSは、売手から入手した財務情報に間違があることに気づきました。売手は間違いを否定し、クロージングをしないと契約違反になる、と主張したため、買手はクロージングに応じました。クロージング後、買手は表明保証違反で売手を訴え損害賠償を請求しました。ニューヨーク州控訴裁判所は、売手が提出した財務情報が正しいと「信頼」して価値を算定した買手が、売手の財務情報に疑いを持ったというだけで、売手は表明保証責任を逃れられるべきではない、という見解を示しました[4]。そこで、検討すべき問題は、買手が売手の表明保証を「信頼」したかではなく、売手の表明保証が正しいという前提で買ったかである、としています。

CBS対Ziff-Davis事件判決から2年後、Galli対Metz事件判決で、連邦第二巡回区控訴裁判所は、買手はクロージング前に売手の保証違反の事実を十分に知っており、それにも関わらず取引を実行すれば、求償権を保持することを明確にしない限り、買手は求償権を放棄したと考える、という見解を示しました[5]。さらに、売手が買手に保証違反事実を伝えたのであれば、買手は求償権を放棄した可能性は高い、一方で、買手が公知の事実からもしくは第三者から売手の保証違反事実を知ったのであれば、CBS対Ziff-Davis事件判決にあるように、買手は売手の保証を保険として買ったとみなされる可能性がある、としています。

 

CBS対Ziff-Davis事件判決は、ニューヨーク州だけでは無く、多くの州で、契約条件として表明への「信頼」を要件としないとする根拠として引用されています[6]。また、Galli対Metz事件の、買手が売手の表明保証違反を知っている場合、買手が求償権を放棄した可能性がある、という制限も、多くの判例で引用されています。

デラウエア州

Cobalt Operating対James Crystal事件では、売手James Crystalが提供した財務諸表に示されたキャッシュフロー額が実際よりも多かったのですが、買手Cobalt Operatingはデューデリジェンスによりその誤りを見つけられないまま取引を実行しました[7]。買手はクロージング後に詐欺と表明保証違反を理由に売手に補償を要求しました。裁判で、売手は、買手がデューデリジェンスで誤りを見つけられるはずであった、従って売手の表明保証を「信頼」したとは言えない、と主張しました。デラウエア州裁判所は、買収契約にはサンドバッギング条項が入っており、売手はそれを覆すことはできない、そして、デューデリジェンスはお金がかかるので、買手が買収する事業を詳細まで調べなくてもいいように、売手と買手は表明条項を交渉し両者間でリスクを振り分ける、本契約では売手の表明により、売手がリスクを引き受けた、と説明しています。

カリフォルニア州

カリフォルニア州判例は、1991年のKazerouni対De Satnick事件判決に見られるように、比較的最近まで、買手による売手の表明保証への「信頼」を、表明保証違反による売手への求償の要件としてきました[8]。ところが、2006年のTelephia対Cuppy事件判決では、連邦地方裁判所連邦地方裁判所(カリフォルニア北地区)は、サンドバッギング条項があれば、買手による売手の表明保証への「信頼」は不要である、と判断しています[9]。その後現時点まで、Telephia対Cuppy事件判決を覆す、もしくは、否定的な見解を示す判例が出ていませんので、現時点では、サンドバッギング条項があれば、買手による売手の表明保証への「信頼」は不要、無ければ買手が売手の表明保証違反を知って取引を実行すると、売手に求償できないという結果が想定されます。

テキサス州

テキサス州は、現在でも買手による売手の表明保証への「信頼」を、表明保証違反による売手への求償の要件としていると考えられます。ところが、2007年のGale対Carnrite事件判決は、訴因が表明保証違反ではなく、契約違反であれば、売手の表明保証への「信頼」は必要ない、という判断を示しました[10]。この事件では、メキシコの不動産を購入するのに、メキシコの外国人土地保有制限を避けるために、買手Galeは売手Carnriteの不動産を直接購入するのではなく、この不動産を所有する合同会社(LLC)の所有権を購入しました。購入して数年後に、買手はこの不動産を転売しました。この際に譲渡税が発生したのですが、買収時にCarnriteが譲渡税を報告しなかったため、Galeは買収前のCarnriteの簿価で譲渡益を計算し、本来ならばCarnriteが払うべき譲渡税をGaleが払うことになってしまいました。GaleはCarnriteを買収契約の売手の表明保証を理由に契約違反で訴え損害賠償を要求しました。これに対して、Carnriteはいくつかの理由で簡易判決(Summary Judgment)を要求しましたが、その一つの理由は、Galeは売手の表明保証を「信頼」していなかった、というものです。連邦地方裁判所(テキサス南地区)は、テキサス法は契約違反と補償違反を別の訴因とみており、それぞれ異なる要件がある、原告は契約違反または保証違反のどちらか、または、両方で訴えることができる、契約違反の要件には「信頼」の証明は不要である、と判断しました。

ミネソタ州

ミネソタ州は、他州の裁判でも引用される1992年のHendricks対Callahan事件判決にあるように、買手による売手の表明保証への「信頼」を、表明保証違反による売手への求償の要件とする州として知られてきました[11]。ところが、2014年のLyon Fin. Servs., Inc.対Ill. Paper & Copier Co.事件判決で、ミネソタ州最高裁判所が述べているように、Hendricks対Callahan事件判決の根拠となっているMidland in Peterson対Bendix Home Systems, Inc.事件判決を、暗黙ではあるが覆したとしています[12][13]

従って、現在では、ミネソタ州も、買手による売手の表明保証への「信頼」を、表明保証違反による売手への求償の要件としない州であると考えられます。

コロラド州

 

コロラド州判例法は、表明保証違反による売手への求償の要件として、依然として、買手による売手の表明保証への「信頼」を要求していると考えられます。1993年のAssociates of San Lazaro対San Lazaro Park Properties事件では、モービルホームパークの買手が、クロージング前に政府機関に確認したところ、売手が表明したモービルホームの企画軒数215件のうち、政府が認可したのは194軒であったことを知りました[14]。これにも関わらず買手は買収を実行しました。クロージング後に、2件のモービルホームのテナントがモービルホームの設置許可を申請したところ、認可されていないという理由で申請が却下されました。そこで、買手が売手の表明保証違反を理由に損害賠償を請求したのです。買収契約書には、契約内容は、両者の文書に合意が無い限り、放棄、修正、破棄されることはない、という条項が含まれています。それにも関わらず、コロラド州最高裁判所は、買手は調査により認可の問題がある事を知りながら買収を実行したことで、売手への表明保証違反による求償権を放棄した、と判断しました。

カンザス州

 

カンザス州判例法も、表明保証違反による売手への求償の要件として、依然として、買手による売手の表明保証への「信頼」を要求していると考えられます。1976年のLand 対Roper Corp.事件判決では、連邦控訴裁判所(第10巡回区カンザス州)は、物の売買に該当する統一商事法典の条文を根拠に、買手による売手の表明保証への「信頼」は不可欠である、と判断しました[15]。1992年のComeau v. Rupp事件判決でも、連邦地方裁判所は、Land 対Roper Corp.事件判決を引用して、カンザス表明保証違反の訴えでは「信頼」は不可欠の要素であるとしています[16]。この判断を覆す判例は見当たりません。一方で、Land 対Roper Corp.事件判決を引用した1999年のマサチューセッツ州の連邦地方裁判所は、Land 対Roper Corp.事件判決の依存した統一商事法典は変更され、もはや「信頼」を要求していないので、現時点(1999年10月の時点)でこの争点を扱えば、異なった結果になっているであろう、としてLand 対Roper Corp.事件判決の有効性を疑問視しています[17]

州判例法のまとめ

州判例法からわかることは、法理論の違いはあるものの、現在では、ほとんどの州で、表明保証違反による売手への求償の要件として、買手による売手の表明保証への「信頼」を要件としていません。

一方で、ニューヨーク州判例のGalli対Metz事件判決にあるように、買手がクロージング前に売手の保証違反の事実を十分に知っており、それにも関わらず取引を実行すれば、買手は求償権を放棄したとみなされる可能性があること、に留意する必要があるでしょう。

最初の事例で、毎月最低10万も儲かるはずがない、多分毎月1万円くらいしか儲からないだろうと買手は知っていたが、この事業がどうしても欲しいので当初の値段で買った場合、買手は、毎月最低10万儲かるという文書による売手の表明保証違反を理由に、売手から損害賠償を得ることができるか、という問題を考えてみます。

 

契約書にサンドバッギング条項が入っている場合、買手はこの条項を理由に補償請求権を放棄していないことを主張できますが、上述のようにサンドバッギング条項は絶対ではありません。

 

契約書にアンチ・サンドバッギング条項が入っている場合、買手はこの条項を理由に補償請求権を放棄したと見做されるでしょう。

買手と売手が折り合わず、サンドバッギング条項もしくはアンチ・サンドバッギング条項どちらも入れない、というケースも多いようです[18]。この場合、文書による合意なくして放棄は無いという一般的なNo Waiver条項があっても、買手は補償請求権を放棄したと見做される可能性があります。No Waiver条項が無ければ、買手は補償請求権を放棄したと見做される可能性は高まるでしょう。

最後に、上述の州判例法の考察を元に、買収契約の売手表明保証違反による買手の求償権に関する、買手と売手の戦略の一例を挙げてみます。

買手の戦略

1        買収契約に、買手にとって有利な準拠法を選択します。もしくは米国ではない国の法律、特に成文法の国の法律を準拠法とする選択肢もあるでしょう[19]

2        売手の表明保証がクロージング後も存続することを買収契約に入れます。なお、売手が上場会社の株主である場合、売手はクロージング後の責任を負うことに強い抵抗を示すことが予想されます。

 

3        買手が売手の表明保証違反を知ったことにより、買手の求償権は影響を受けない、というサンドバッギング条項を買収契約に入れます[20]。ニューヨーク州のGalli対Metz事件判決で、クロージング前に売手の保証違反の事実を知っており、それにも関わらず取引を実行すれば、求償権を明確に保持しない限り、買手は求償権を放棄したと考える、という見解に対応するものです。

一方で、買収契約にサンドバッギング条項を入れれば買手は求償権を放棄したと見做されることはない、と断定するのは、判例法の世界では、正しくありません。コロラド州のAssociates of San Lazaro対San Lazaro Park Properties事件では、買収契約に文書による合意なくして放棄は無いという文言があるにも関わらず、買手は求償権を放棄した、と判断されています。ニューヨーク州を含め、他の州でも、サンドバッギング条項にも関わらず、事実背景により、買手は求償権を放棄したと判断される可能性はあります。

 

4        個別の補償条項を入れます。個別の補償条項とは、例えば、買収事業のクロージング前の税務申告もしくは税務ポジションについて税務当局の調整を受けた場合、売手は損害を補償する、という内容です。一般的な補償条項は、義務や表明保証に違反した場合、補償するという内容であるため、上記の判例にあるように、表明保証への「信頼」があったか、という争点が発生する場合があります。これを避けるため、ある事態が発生したら補償する、という内容にしてしまうのです。

 

5        クロージング前に売手の表明保証違反を知った場合、契約解除もしくは買収価格や条件を再交渉します。

 

売手の戦略

 

1        買収契約の準拠法を、売手に有利なものにします。現在ではほとんどの州判例法が表明保証への「信頼」は必要ないとしているため、選択肢は限られていますが、どの州の判例法が買手の請求権の放棄を認めやすいかを検討する価値はあるでしょう。

 

2        売手の表明保証がクロージング後も存続することを拒絶できない場合でも、存続期間を制限します。求償期間も制限します。

 

3        サンドバッギング条項を拒否します。可能であれば、買手が売手の表明保証違反を知った場合、または、知り得た場合クロージング後にその違反を理由に買手は売手に求償できない、とするアンチ・サンドバッギング条項を入れます[21]

 

4        売手の詐欺、意図的な表明違反、もしくは重大な過失による表明違反にのみ、売手表明違反による買手の求償を可能とします[22]。もしくは、売手の表明保証違反により、買手に重大な影響が発生した場合にのみ、買手の求償を可能とします。

 

5        求償額の上限を設け、上限を低くなるように交渉します。

以上

[1] 事業の売買は、物の売買ではないため、口頭による契約が成立し、その表明保証違反として契約法に基づく損害賠償を請求することは可能です。

[2] 2001年の連邦地方裁判所フロリダ州中部地区のSouth Broad対Gem Broad事件判決のグレゴリー・プレスネル判事の解説を引用しています。S. Broad. Gp., LLC v. Gem Broad., Inc., 145 F. Supp. 2d 1316, 1324(M.D. Fla. 2001).

 

[3] CBS Inc. v. Ziff-Davis Pub. Co., 553 N.E.2d 997 (N.Y. 1990).

 

[4] CBSとZiff-Davisの買収契約書にサンドバッギング条項が入っていたかは定かではありません。サンドバッギング条項が無かったとしても、当事者の契約上の権利が両者の文書での合意なし放棄されることはないとするNo Waiver条項が買収契約書に入っていなかったとは考えにくいのです。

 

[5] Galli v. Metz,973 F.2d 145 (2 Cir., 1992).

 

[6] 比較的最近のニューヨーク州の判決として、Merrill Lynch & Co. v. Allegheny Energy, Inc. 500 F.3d 171 (2d Cir. 2007)も同じ見解を示しています。この判決では、Rogath v. Siebenmann, 129 F.3d 261, 265 (2d Cir. 1997)を引用し、保証事実が間違っていることを知っている買手は、売手の保証を将来のクレームに対する保険として購入したとも考えられる、としています。Powers v. Stanley Black & Decker, Inc. 137 F. Supp. 3d 358 (S.D.N.Y. 2015)も同じ見解を示しています。

 

[7] Cobalt Operating, LLC v. James Crystal Enters., 2007 Del. Ch. LEXIS 108, 2007 WL 2142926 (Del. Ch. 2007).

 

[8] Kazerouni v. De Satnick, 228 Cal. App. 3d 871, 279 Cal. Rptr. 74 (Cal. Ct. App. 1991).

 

[9]Telephia, Inc. v. Cuppy, 411 F. Supp. 2d 1178 (N.D. Cal. 2006).

 

[10] Gale v. Carnrite, 2007 U.S. Dist. LEXIS 13278 (S. D. Tex 2007).

 

[11] Hendricks v. Callahan, 972 F.2d 190, 194 (8th Cir. 1992).

 

[12] Midland in Peterson v. Bendix Home Systems, Inc., 318 N.W.2d 50, 52-53 (Minn. 1982).

 

[13] Lyon Fin. Servs., Inc. v. Ill. Paper & Copier Co., 848 N.W.2d 539 (Minn. 2014), Footnote 6.

 

[14] Associates of San Lazaro v. San Lazaro Park Properties, 864 P.2d 111, 115 (Colo. 1993).

 

[15] Land v. Roper Corp., 531 F.2d 445, 448 (10th Cir. 1976).

 

[16] Comeau v. Rupp, 810 F. Supp. 1127, 1167(D. Kan. 1992).

 

[17] Mowbray v. WMH, 189 F.R.D. 194, 197-202(D. Mass. 1999).  この判決の背景は、WMHに事業を売却したMowbrayは、その対価としてWMHの株式を譲受しました。WMHは過去の財務諸表の修正したため、Mowbrayはその事実がWMHの表明保証違反であると主張、他にもWMHの株式を譲受した者を含めて集団訴訟として代表権を得ようとしました。集団訴訟の要件として、争点の画一性の要件があるため、裁判所は、複数の州法において表明保証違反の訴因で表明保証への「信頼」が要求されるか、という問題を検討しました。この中で、原告と被告は全米でミネソタ州とカンザス州の二州のみが「信頼」を要求することを合意しましたが、裁判官はこれら州の「信頼」を要求するとした判決、ミネソタ州のHendricks対Callahan事件判決(上述)とカンザス州のLand 対Roper Corp.(上述)を吟味し、これらの判決の有効性に疑問があるとしたのです。

 

[18] “Private Target M&A Deal Points Study” by American Bar Association Business Law Section の2016年と2017年上半期のデータによりますと、サンプルの買収契約の42%がサンドバッギング条項を含み、8%がアンチ・サンドバッギング条項をを含み、残りの51%がどちらも無い、としています。

 

[19] 契約の準拠法は契約の解釈に該当するもので、買収取引の全ての項目に該当するわけではありません。例えば、従業員の雇用については雇用の存在する州法、福利厚生については連邦法が該当します。

 

[20] サンドバッギング条項は、以下のような文言で、補償(Indemnification)条項に加えます。

 

The right to indemnification, payment, reimbursement, or other remedy based upon any such representation, warranty, covenant, or obligation will not be affected by any investigation (including any environmental investigation or assessment) conducted or any Knowledge acquired at any time, whether before or after the execution and delivery of this Agreement or the Closing Date, with respect to the accuracy or inaccuracy of, or compliance with, such representation, warranty, covenant, or obligation.

 

(訳)表明、補償、約束、または義務を理由に、補償、支払い、払い戻し、その他の救済を要求する権利は、表明、補償、約束、または義務が正しいか正しくないかについての調査(環境調査を含め)または獲得した知識(本契約の締結もしくはクロージングの前後に獲得したかに関わらず)によって影響されることは無い。

[21] 売手の立場が強ければ、クロージング前に相手の表明保証違反を知ってクロージングした場合、相手方へ求償することはできない、というアンチ・サンドバッギング条項を買収契約に加える場合があります。以下は、売手に大変有利なアンチ・サンドバッギング条項の一例です。

 

Notwithstanding anything contained herein to the contrary, Seller shall not have (a) any liability for any breach of or inaccuracy in any representation or warranty made by Seller to the extent that Buyer, any of its Affiliates or any of its or their respective officers, employees, counsel or other representatives (i) had knowledge at or before the Closing of the facts as a result of which such representation or warranty was breached or inaccurate or (ii) was provided access to, at or before the Closing, a document disclosing such facts; or (b) any liability after the Closing for any breach of or failure to perform before the Closing any covenant or obligation of Seller to the extent that Buyer, of its Affiliates or any of its or their respective officers, employees, counsel or other representatives (i) had knowledge at or before the Closing of such breach of failure of (ii) was provided access to, at or before the Closing, a document disclosing such breach or failure. 

(訳)本契約の他の相反する内容に関わらず、(a)買手または買手の関連会社、役員、従業員、弁護士、または代理人が、(i) クロージング時またはその前に、売手の表明保証の違反や誤りを知っている範囲、もしくは (ii)クロージング時またはその前に、そのような事実を示す書類にアクセスすることができた 範囲で、売手は、売手の表明保証の違反や誤りによる責任を負うことはない、(b) 買手または買手の関連会社、役員、従業員、弁護士、または代理人が、(i) クロージング時またはその前に、クロージング前の売手の義務違反を知っている範囲で、もしくは (ii)クロージング時またはその前に、そのような事実を示す書類にアクセスすることができた 範囲で、 クロージング前の売手の義務違反の責任をクロージング後に売手が負うことはない。

[22] 意図的そして重大な過失とは何かという問題を避けるには、それぞれの定義を明確にする必要があります。

このニュースレターの内容は米国法の解説であり、特定の背景事実に該当するアドバイスではありません。

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